どこまでこの道を掃く

ミヒャエル・エンデの名作『モモ』には、ベッポという道路掃除夫の老人が登場する。ベッポは主人公モモの友人で、毎日道路を掃いて過ごしている。彼の掃除の仕方の特徴として、作業中にゴールを考えない、というものがある。あとどれくらい掃くかということ…

「優しいネオリベ」以外の出口はない

先日、朝日新聞の連載「藤田直哉のネット方面見聞録」で「『ひろゆき』に頼る者を非難できるか」という記事を読んだ*1。内容は伊藤昌亮の「ひろゆき論――なぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのか」*2の紹介である。藤田は、伊藤がひろゆき(西村…

脳神経外科に

高校三年生の二月になると、学校は自由登校になる。授業は当然ないので、登校しようがしまいが単に自学をすることになるのは変わらない。だから、自宅では集中しづらい人や教員に添削を依頼する人だけが集まって、暖房のあまり効かない教室で黙々とペンを動…

世界は世紀末の夢を見る

ずいぶん前になるが、『たぶん悪魔が』という古いフランスの映画を見た。1970年代あたりのフランスで、あるエリート男子学生が自殺に至るまでの顛末を描いたものだった。明快な筋書きがあるわけではなく、いくつもシーンを並べることで何かを象徴的に浮かび…

人命は生活より重いのか?――環境活動家に答えて――

環境活動家がゴッホの「ひまわり」にトマトスープを投げつける事件があった。活動家は「絵画の保護と地球や人類の保護と、どちらが重要なのか」と叫んだという。 www.msn.com これについて書きたいことがいくつかある 1.ろくでもないコメントが多すぎる 2…

なぜ国民民主党を支持するか

私が国民民主党の支持者であることは、ある程度ツイッターを見てくれている人なら知っていると思う。選挙まで間があるうちに、その支持する理由を書いておきたい。 おおまかにいうと以下2つになる ①時間をかけてでも政権をとれる政党を育て、自民党と立憲民…

さよならメビウスリング

中学生の頃の一時期、メビウスリング掲示板をやっていた。累計で5つくらいのハンドルネームを使って、自分で立てたものも含めて20くらいのスレッドに入っていたように記憶している。 中でも一番続いていたのが「深い話がしたいです」というスレッドだった。…

CIVILIAN「人間だもの」について

この頃知ってとても好きになった曲に、CIVILIANの「人間だもの」がある。語句として明示的には出てこないものの、クリスマスに恋人から裏切りの告白を聞かされるというのが大筋の内容になっている。 最初らへんの「街は今華やかな飾り付け 壊れたカメレオン…

祝祭と地獄と日常と

マスメディアでもSNSでも、東京五輪の熱狂やドラマと、新型コロナウイルスの感染拡大や病床逼迫のニュースとが交互に流れていく。そんな日々が二週間ほど続いた。このすさまじいコントラストを見て、何か感じた人も多いと思う。東京五輪が終わる今日、これに…

「映像の世紀「夢と幻想の1964年」」(NHK)記憶メモ・雑感

1964年の東京オリンピックも実はグダグダだったのではないかという意見をときどき耳にする。前回の東京五輪は一般的に良いイメージがあるが、それは回想によって生まれたものにすぎず、現在グダグダ感が溢れ出している今回の五輪も後になればよかったものと…

それほどの義務がありますか――自粛について――

現在、新型コロナウイルスにかかわる緊急事態宣言が4都府県に、蔓延防止等重点措置が7県に発出されている。一応期限はいずれも5月11日となっているが、延長が検討されているという情報があったり、新たに発出を要請する県があったりと、対象地域が増える気配…

善いことをする動機に関するメモ

人が善いこと、典型的には自分に金銭等の明白なメリットがないにもかかわらず困っている人を助けるなどといった行為をするのはなぜだろうか。最も素朴に考えれば、その人が利他的な博愛精神の持ち主だからだろう。一方で、他人のためになる行為も、それを行…

「憂国」という演技

先日、ある読書会で三島由紀夫の短編『憂国』を扱った回を担当した。そこで三島について少々調べたので、そこで考えたことを書いていく。 『憂国』のあらすじは、その冒頭部分を読めばおおよそ把握できる。 昭和十一年二月二十八日(すなわち二・二六事件突発…

佐藤智晶先生の思い出

昨年受講していた講義の一つに「技術利用と法」があった。 ガイダンスの出席者は4人しかおらず、その後も最大で7人程度の受講者数で、理系の院生と公共政策の院生がそれぞれ3,4人ずつだった。授業はその場でのリサーチとディスカッションを中心として進めら…

死の夢から覚める

夢日記。 私は暗く大きな、満員の客が入ったホールの客席に座っている。正面のステージはライトアップされていて、そこにはゲームをプレイできる筐体が3台設置されている。 壇上にいる3人のプレイヤーがゲームをクリアし、会場に歓声が上がる。右端にいたプ…

吸ひこまれない

本当は解題が必要なタイトルなんてそもそもつけてはいけないのだけれど。 このブログの「吸ひ込まれない」という題は次の短歌に由来する。 沈黙の山へ続ける白き道ある私度僧の吸ひ込まれけり 私が高校生のときに出場した短歌の大会で作った歌だ。本来は大会…

2020年4月ブログ良記事4選

いい加減何か書かなければブログがインターネットの流木になってしまう。その折に、ちょうど自粛生活で、購読しているブログたちの更新頻度が高めになっている。そこで先月に更新された記事の中から好きなものを紹介していこうと思う。 ①「段ボールを解体す…

2019年上半期 怪書4選

今年の1月~6月に読んで度肝を抜かれた、もしくは呆然とした本4冊です。どれもすごいので読んでください。 ①『一遍上人語録』(大橋俊雄校註、岩波文庫) 高校で日本しか倫理を多少真面目に勉強していた人は「踊り念仏」で記憶していると思う一遍上人。奇抜な…

煩悩108コンテンツリスト

1.概念 2.麻雀 3.無機物 4.紅茶花伝 5.伊藤計劃『虐殺器官』でのクラヴィスとルツィアとの会話 6.覚和歌子 7.好きな知人のブログ 8.くだらない冗談ばかり考えている人 9.全知全能 10.短髪 11.ベビースターラーメン 12.黒蜜 13.ルンペンプロレタ…